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司会のダンディな先生が紹介すると、妙にどんよりした雰囲気で濃紺の長髪を靡かせる女子が出てきた。その薄幸ながら儚い美しさを振り撒く美少女は、出てきただけで会場の人間をどよめかせた。
「生徒会長の放離 命(ハナバナ ミコト)です。今日からこの枝露高校に入学する皆さんに会えて光栄です――」
機械的で心が籠っているように聞こえない声。何だか悲しそうだった。まるで壇上で話すのを嫌がっているみたいな。
「――少々灰汁の強い校風で馴染むのに時間が掛かるかもしれませんが、これから三年間の学校生活を存分に楽しんでください。私からの言葉は以上です」
放離会長の言葉が終わって捌けてもざわめきが残る体育館。何故なら棒読みの言葉でも、それ以上に彼女の印象を強める美貌があったから。
何だか恐ろしい場所に来てしまった気がする。
「これで入学式を終わります。これからクラスを発表しますので、担任の先生の指示に従って行動してください」
「……何かこの学校凄いですね。元々少ない自信が更に無くなりそうです……」
隣で子犬みたいに可愛く縮まり俯く下館は、見事に俺の母性本能を刺激してくれた。
これだけ顔が良い人間ばかりが集まっていると、何だか人間関係がギクシャクしそうで怖い。
「まぁ下館は自信持っていいんじゃないかな。可愛いし」
「……」
「最初は派手な髪色だとか思ったけど、意外と周り見ると派手なの多いし。それに、その、似合ってるしな」
「……」
「だからそんなに落ち込むなって。……下館?」
「……むにゃむにゃ……も、もう無理……」
寝てやがる。こいつぁ大物だ、将来ビッグになるな。ってか寝てるのに頬が紅潮するとかどんな夢見てるんだ。
本当にこの学校も生徒も普通じゃない。
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