一章 みんな違ってみんな良い

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◇  何かがおかしい。  俺と俺の隣に座っていた下館は一組だった。一組の人数は三十三人で、男子十七人で女子十六人。もちろん皆の顔立ちが一級品なのだが、この一組は特にそのクオリティに個性が強い気がする。  一言で言えば奇抜だとか、特徴的だとか。下館は髪色はもちろんの事、性格も十分なくらいに個性的で一緒にいて飽きない。  そして席に着いて周りを見渡しても、何かしら特徴を持つ人間しか座っていないのだ。何だか異様な空間に蹴り出されたようなアウェイな気分だ。  しかもそんな俺達を誘導してきた担任の先生が、あのドS教師の座に相応しい眼鏡の女性だった。 「それでは全員席に着いた所で自己紹介をします。私は知っての通りこのクラスを受け持つ事になりました如月 満子(キサラギ ミチコ)です、よろしく」  全員が、と言いつつ空席が一つある。という事はそいつは欠席か。  白いチョークで達筆に書く。ところどころ、主に男子から笑いを堪えているような悶える声が耳に入るが、それが先生の名前だという事くらいは分かる。失礼だな。 「このクラス、一組は特待生を集めた特別なクラスです。つまり皆が知っている通り美男美女を集めた訳ですが、このクラスは更にその中で何かしら属性を持っている人間の集まり、という訳です」  一体何が目的なんだ! と本気で尋ねたかった。  この学校は変だ、間違いなく。何故なら俺なんかがまともな人間に感じるから。自分で言うのも変だが、こんな変態が凄く普通の人に近い気がする。 「何が目的なのか、これがみんなの一番の疑問点でしょうが、簡単な事です」  眼鏡をクイッと指先で直し、 「授業は基本的に一日六時間、週四は通常の授業をやりますが、必ず週一回だけ一時間『恋愛』の授業を行います」  凛々しくおかしな発言をした如月先生に、生徒会長の言葉の時のようなざわめきが起こる。
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