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聞いた事の無い科目だ。学校で習う事と言えば、五教科を除けば家庭科、美術、技術、保健体育、音楽、小中学では生活や総合、道徳などがある。が、恋愛の授業というのは、まさに学校が教えてくれないながらも社会に出てから必須とも言える知識である。
それを授業としてやるだなんて、前代未聞だ。
「恋愛の授業では異性との生活に関しての知識からお付き合いまで実践的な物を学び、最終的には校内でフィーリングカップルを作り卒業する。この科目こそがこの高校の他校とは異なる特色です」
そして、と付け足して、
「このクラスの生徒は全員が、この一年生の中で特に異性に関しての経験が浅く、なおかつ個性豊かな選抜された三十三名なのです」
彼女いない歴=年齢の俺は唖然とする。特待生と言われて舞い上がった俺が馬鹿だった。
そうか、だから俺はこのクラスなのか。(自分で言うのも恥ずかしい話だが)美顔を隠れ蓑にする変態の俺がここに選ばれたのはそんな理由なのか。
大して頭が良い訳でもないはずの俺が特待生で入れた理由が分かった。とんだ恥をかいたものだ。
「そんな一組ですが、今日はこのまま解散します。個性が強いという事は馴染むのが難しいでしょうから、自由に行動して、なるべく早く友達を作ってください。寮に帰っても結構です。明日からロングホームルームを始めて、詳しい話をしますので、そのつもりで。以上おしまい」
手早く済ませた感マックスで、如月先生はとっとと教室を出てしまった。内装はそれなりにありふれている教室の中に、孤立するようにポツンと残されるイケメンと美少女の群れ。異様なり。
「あの……一年君。寮に帰りません?」
何をすればいいのやらと落ち込む人間の一人である俺は、困り顔で話しかけてくる下館に救われた。知り合いを作っておいて良かった。
「あぁ……行くか」
疎らに教室を去っていくクラスメートを見て、俺も下館と便乗する事にした。
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