一章 みんな違ってみんな良い

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 廊下に出ても、顔が良い者達が緊張した面持ちで下校を始めていた。  何だかここまでくると落ち着かない。アイドルの養成学校に来ているみたいだ。  寮に戻る道中はその不安みたいな感情が右肩上がりで増大していった。みんな考える事は同じらしく、まずはルームメートと仲良く。それが第一らしい。  運良くルームメートの一人である下館と知り合った俺は、そういう人間よりは幾分か有利な気がする。それでも他の三人がどんな人間なのか不安で仕方ない。  相変わらず無駄に豪勢なロビーを進み、建物の最上階、最奥部に位置する扉の前に立った。  一息吐いて、ドアノブを捻る。すると鍵は開いていたため、どうやらすでに一人は帰ってきているらしい。 「いますね、誰か」 「だな。……ふぅ。行くぞ」 「男は出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」  意を決して扉を開く。  次の瞬間には、白黒の球体が俺の視界を塞いでいた。 「ぐひぇっ!?」 「わわっ、大丈夫ですか一年君!」 「何かしら今の汚い悲鳴」 「何者だお前!」  様々な声が飛び交う中、見事に顔面にサッカーボールを受けた俺は仰向けに倒れた。  痛い。痛すぎる。こんな仕打ちはあんまりだ。下館が心配してくれるだけでも幸運か。  部屋の奥の発信源らしい声に注目する。どうやら二人はすでに帰ってきているらしい。 「誰ですかあなたは! いきなりこんな……酷いです!」  何か凄く真面目に怒る下館。この子根は真面目なんだ。ちょっとネジが抜けているだけで、本当に真面目な子なんだ。  痺れる顔を上げる。サッカーボールを発射してきたらしい女子が、ずかずかと俺達の方に近付いてきたのが見えた。 「私は鷹嘴 瑠惟。この四十八号室のルームメートだ。ここは男子禁制なのに何でルームメートでもない男が我が物顔でここに入ろうとしてるんだ」 「話した事もねぇのに普通決め付けるか!?」
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