プロローグ

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「キャーッ! 冷たぁい!」  見守るように照り返す太陽。パシャリと弾ける水。凛と弾ける笑顔。 「一年君! こっちに来なよ!」 「いつまでそんな所で寝転がってんだよ。男ならもっとこう……飛び込めよな」  この一年 江路(ヒトトセ コウジ)の名を呼ぶ美少女達は、渋った反応を見せる俺にさえ無邪気に手を差し伸べる。太陽より笑顔が眩しい。  そして挑発的な水着。くびれ、鎖骨、腋、腰骨、二の腕、項、背中! プールと言えばこれしかない! 「まだ反応は無いの?」 「おわっ、ビビらせるなよ佐保姫」  ビーチチェアに寝そべる俺の隣から、甘く誘うような妖艶な囁きが飛び出す。クラスメートなのに歳上のような艶やかさがある佐保姫 澪奈(サオヒメ レイナ)は、呆れた顔で嘆息した。  眉を潜める顔も美しい。現存する美人の中でこれほどまでに顔立ちが整い、更には大人顔負けの落ち着きがある人間は彼女以外にいないだろう。宝石を散りばめたように艶が映えた黒髪。加えて左の目尻にある泣き黒子が、中身の熟成した大人を思わせるような……と、これ以上語っても仕方ない。とにかく美人なのだ。  そんな彼女もビキニで俺を誘惑する。モデル並みのスタイルにより、胸部の底が見えないのではと思う程の峡谷が俺の視界に入った。そそるね。 「こんなに可愛い子達がいるのになぁ……自分で言うのも変だけど、この学校にいるって事は並より可愛いって事だし……」 「うん、誇れるくらい綺麗だと思うよ、佐保姫は特にね」  絶妙な具合の謙遜が、嫌気を感じさせない。これが大人の回答だろう。  しかし、まぁ。謙遜する必要が無い程に麗しきお顔な訳で。目の前ではしゃぐ美少女二人も、遠慮なく胸を張って可愛いと自己主張して良い程の美少女な訳で。
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