一章 みんな違ってみんな良い

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「家具は自室の物以外は全て共用! まぁもちろんお風呂の順番とかは一年君には我慢してもらうしかないかもしれないけど、基本的に全員性別の事は考えない。分かった?」 「うぅ……澪奈の言葉は何故か反論できない……」  結局は俺の意見が通ったようなもの。佐保姫には感謝しなければ。  もちろん不純な事は山程考えていた。どさくさ紛れに風呂を覗いたり、下着を被ってみたり。そんな変態思考は当たり前のように働いてはいた。だって男の子だモン!  しかしそんな事を実行したら、これから最低でも一年間寝食を共にするルームメートとの関係が気まずくなる事くらいは、俺のちっぽけな脳味噌でも想像できる。  モラルは守る。しかし俺も男だ。こんな美味しいシチュエーションで何のアクションも起こさないなんて男が廃る。  いつかナニか仕掛けよう。 「一年君、表情筋がずいぶんと柔らかいわね」 「それほどでも」 「褒めてないわよ。何にそんなニヤニヤしてるのかしら」 「マジでこんなのと一年間一緒なのかよ……」  頭を抱える二人だったが、俺の隣で下館はただ首を傾げるばかりだった。  鈍感なのか天然なのかは知らないが、とりあえず俺が誤解されている性格の意味を分かっていないらしい。逆に今はそれが助かる状況な訳だが。 「こんなのとって言うより、私はこんな学校で三年間って考える方が憂鬱になるわ。ここの特徴は学園内が小さな街みたいになっている事なんだけど、一番の特徴は住む教員と生徒の人間性よ」 「と言うと?」 「少しは自分で考えなさいよね……恋愛に力を入れてる学校なんて聞いた事ないでしょ? まぁ入学した自分が悪いのだけれど……」  言われてみればそうだ。まず学校側から異性交遊を推奨してくるなんて前代未聞だ。  教育委員会がこんな制度を本当に許しているかも分からない。それにこの事を受験前に隠していた事自体も、メディアで取り上げられないのも不自然だ。  一体何がどうなっているのだろう。
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