プロローグ

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 美少女三人を引き連れて、学校の私設である屋内プールでハーレムを作る俺は間違いなく幸せ者だろう。  けど何故だ? 素直に喜べないのは。 「一年! お前もそろそろ泳げよ」  突然陰ったと思ったら、先程までプールで子どもみたいに水の掛け合いをしていた鷹嘴 瑠惟(タカノバシ ルイ)が、真っ正面から手を差し伸べてきた。さっきは遊びながらのお誘いだったが、今度は本気らしい。  白い肌はとてもサッカーをやっているとは思えない。細く締まった四肢は、運動をしているからこその賜物か。  褐色に近い茶髪は、普段一つに纏めているのだが、プールで泳ぐべく下ろしているために、ちょうど肩甲骨を隠している。いつも男勝りな鷹嘴が女っぽく見えるのは、濡れる髪もそうだが、程好く締まった体がセパレートタイプの水着で際立っているからか。  佐保姫には負けるが、鷹嘴もなかなかのスタイルを誇っている。鋭い攻撃的な瞳が、佐保姫と違って少々子どもっぽさを醸し出していた。 「俺はいいよ」 「何だ、泳ぐの好きじゃないのか?」 「好きじゃないって言うか……苦手と言うか……」 「……あっ、分かったぜ。金槌なんだな! はは、だからプール渋ったのか!」  馬鹿にするように腹を抱える鷹嘴に、少しムッとした。けど事実だから反論できやしない。 「金槌って意味でも、反応って意味でも、一年君は男らしくないわね」 「余計なお世話だちくしょう!」 「じゃあ男になるか!」 「は? おわっ!?」  グイッと物凄い力で引っ張る鷹嘴は、俺の手を握ったままプールに道連れした。しなやかな指が俺の手を絡め、ドキッとする。  ちくしょう可愛いじゃねぇか、なんて煩悩が湧き出る間に、さっきまで他人事みたいに眺めていた水飛沫が、目の前で激しく飛散した。一瞬で火照っていたはずの体が冷やされ、視界が焦点が合わないみたいにボヤけた。
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