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「ぷはっ、鷹嘴! お前やってくれたなこの野郎……」
「へへ、ほーらこっちだ! 捕まえてみろ!」
「こらこら瑠惟ちゃん。あんまり挑発すると……」
「上等だこの野郎!」
不自由な水中だが、ここで普段刺々しい鷹嘴の挑発を、指をくわえて見過ごすのは男じゃない。
泳げないと言っても、息継ぎをして泳ぐ事ができないだけであり、途中で立ってもいいのなら少しくらいは泳げる。
悪ガキみたいに笑う鷹嘴に向かって、覚束無いながらも泳ぎ出した。
「あれ? 泳げないんじゃないんかい!」
「捕まえたぜ!」
「ひぁ!?」
完全に油断していたらしい鷹嘴にしがみつく。すべすべの肌に密着して、それはもう水中とはいえど心地好さしかない。
寝ても覚めても運動をする彼女の締まった体に、タコみたいに絡み付く。
「ちょ……キモいんだよ! 触んじゃねぇ!」
「男を嘗めちゃいけないって事を教えてやるぜ」
「何を……ひぅ!? キャハハ! や、やめ……」
脇腹を激しく擽る。摘まめる肉も無い程に絞られたウエストは、擽るこちらも何だか気持ち良かった。
バシャバシャと捕獲された魚みたいに足掻く。
時々どさくさ紛れに腕に当たる胸の感触を確めながら、水上に顔を出して鷹嘴の顔を見る。
ほんのり桃色に染まる頬は、果たして恥ずかしさからなのか、擽られた事による高揚感なのかは分からない。しかしいつも強気に俺を攻める鷹嘴の、こんな乙女らしい姿は、俺の悪戯心を擽った。
ふと夢中で鷹嘴を弄っていると、後方でコソコソと誰かが近付いてくる気配を察知した。
先程鷹嘴とはしゃいでいたもう一人の連れ、下館 あり沙(シモダテ アリサ)が、鷹嘴を奪還すべく忍び寄っているのだろう。
鷹嘴とは正反対に、間の抜けたような優しい瞳。明るい髪色は彼女の性格を映しているようだった。
そーっと水音を立てないように背後まで近付き、そして――
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