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それでも男の象徴には、何の変化も見られなかった。
「めっちゃドキドキするし興奮するけど……やっぱダメだわ」
「本当に困ったわね……一体何でかしら。心当たりは?」
つまらなそうに離れ、先にプールから上がった二人の元に戻る。
このプールは枝露(エダツユ)高校に併設される、ガラス張りで紫外線だけをカットする特殊な屋根を備えたプールで、現在俺達四人が貸切状態で陣取っている。
つまり、誰も知らないこの場所で、美少女三人を引き連れてプールでイチャイチャしている、という事だ。
「特に無いんだよなぁ。保健の授業繰り返していく内にこうなったって言うか……」
「男らしくねぇな」
「文字通りよね」
「心配ですね」
各々が割と心に響く残酷な言葉を吐く。
しかし一番気に病んでいるのは、当事者である俺だ。
「ほら、出てきなさい」
「ったく仕方ねぇな」
「はい、一年君」
自分の不甲斐なさに拗ねていると、三人共々水に漂う俺に手を差し伸べてくれた。
前屈みのその格好は、丘陵と丘陵を隔てる谷を更に深淵なる物へ格上げした。
谷間。三者三様のグレートヒルが俺に向けられている。
嗚呼、青春。そして贅沢。幸福以外の何物でもない、俺には勿体無いくらいのこのシチュエーション。
グダグダでも、それがまた良いと思える良質な時間。
なのに。なのに何故!
「俺の息子は病気なのかね? なぁ、何が原因だと思う?」
「よいしょっと。日頃の行いじゃない?」
「罰当たり」
「超常現象だと思いますぅ」
「馬鹿にしやがって……でもここ絶対におかしいだろ!」
何故俺の男の勲章は立ち上がらないんだ!
引き揚げられた俺は、萎え続ける我が子と同じく、生気の無い植物のように項垂れる事しかできなかった。
どれもこれも、全て。
全て……。
「この学校のせいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私立枝露高等学園。小高い台地に聳える、この全寮制の高校のせいに違いない。
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