一章 みんな違ってみんな良い

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「わ、わ、わ、止まらないですぅっ!」 「はぁ!? ちょっ……げふっ」  急勾配な坂道を全力で走ってくるからだ。  ダイブ。そして押し倒される。顔面には柔らかな感触が、そして後頭部には硬質なアスファルトの感触が……って、そんなレベルでは済まされない激痛が。  それが俺の最初のおっぱいとの、じゃないや、下館 あり沙との接触だった。 「いたたたたぁ……私ってば何ぼーっとしてんだろ……」 「そ、そんな事言ってる間に退いてくれると助かるんだが……」 「あ! ごめんなさい、大丈夫ですか!?」  真っ暗な視界が明けると、まず目に飛び込んできたのは整った可愛らしい顔立ちの少女の、表情が完全に焦燥に塗り潰された顔だった。  可愛い。ニヤニヤしそうになったが、そんな感情より先に後頭部の激痛が俺の顔を支配した。痛みに歪めてしまう。 「痛ッ……入学早々なんだってんだ……」 「すいません、私の不注意で……欠伸しようと手を口に当てたら、何故かキャリーバッグを持ってる左手を口に当てちゃって……」 「天才じゃん……」  血は出てない。どうやらコブができる程度で済みそうだ。  差し伸べられた手を取って立ち上がる。日本人女性の平均的な身長の彼女は、首から下はどこにでもいる普通の人だった。  それなりのスタイルにそれなりの身嗜み。服はもちろん枝露高校のブレザーを纏っているため個性なる物は無いのだが、そんな普通の体には目がいかない程の美顔が、彼女の突出した長所として誇らしげに飾られている。  弄りたくなるような円らな瞳。なぞりたくなるような筋の通った鼻。吸いたくなるようなふっくらとした魅力的な唇。擦りたくなるようなシミ一つ無い綺麗な白い肌。そして顔を埋めたくなるような二次元を彷彿とさせる桃色の長髪。  変態妄想を掻き立てさせるような顔立ちは、まさに厳選されたパーツを組み合わせた美少女だった。
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