家族?

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家族?

「もっと感情をこめてやらんかい!」  亡くなったはずの老人が急に動き出したかと思うと怒鳴り付け指差した。 「も、申し訳ありません」  指先にいた中年男性が腰を九十度に曲げペコペコと頭を下げた。 「それにお前、『またキャッチボールがしたい』のセリフが抜けておったぞ!」 「……ほんとだ。ごめんなさい」  今度は少年に注意をする。先程まで涙にくれていたはずの彼は驚くほど無表情だ。いつの間にか持っていた冊子を確認すると老人に謝罪した。その際にしっかりマーカーで注意書きを書いている。  その様子に一つ頷くと老人は部屋においてあったカメラを再生し始めた。それを見ながら他のにも指導をし始めた。泣き方がわざとらしい、カメラの位置をもっと意識しろ等細かい所までチェックを入れている。  それを一緒に見ていたからの意見も飛び出し議論は白熱していく。  ポツンと一人部屋の端で所在無さげに見ていた医師がおずおずと申し出る。 「あの〜佐々木さん。他の病室への回診があるので今日はこれで失礼しますね」 「おう、先生。また頼むわ」  老人は医師の方も見ずにおざなりに返事をした。医師は老人への挨拶を済ませるとそそくさと病室を出ていった。
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