現実

1/1
74人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

現実

3日間と言っていたが、もしかすると今日も来るかもしれない、明日は来るかもしれないと待っていたが、あの日から白崎が悠希の元を訪れることはなかった。 帰省中で合流できない人を除いた6名と教授を合わせた7名が乗ったレンタカーは高速道路を走っていた。 同じような風景が続く中、あの三日間を思い出す。 どうしてもあれが幽霊だとは思えなくて、家に着いたら「やあ、いらっしゃい」って微笑みながら迎えてくれるんじゃないかと、そんな淡い期待をしていた。 夢現の中から現実に戻ってくると、一般道路に降りていて畑と住宅が混在する景色に変わっていた。 カーナビの細かな指示に従い進んでいくと 『目的地に到着いたしました。ナビゲーションを終了いたします』という、機械的な音声が流れ、二階建ての家の前に着いた。 教授がインターフォンを鳴らすと、スピーカーから白崎のお母さんらしき声が聞こえる。 事前に教授が連絡していたようで、名前を伝えると「少々お待ちください」という声が聞こえ、間もなく玄関の扉が開いた。 先輩はお母さん似なのかもしれない、そんな余計なことを考えていると、花やお供え物が置かれた仏壇の前に案内されるとそこには先輩の写真が飾られていた。 何を話したのか何をしていたのかわからないままアパートの前にレンタカーがとまった。 「ありがとうございました」 お礼を言って車から降り、部屋に向かう。 とぼとぼと階段を上りきると部屋の前に見覚えのある人影があった。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!