まさかのごめんなさい。そしてありがとう

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 公園のスピーカーが子供たちに帰れと告げていた。哀愁の中にどことなく不気味な雰囲気が含まれているのは、子供たちに恐怖を植えつけるためだったりじゃなかったりだとか……。  え? わたしは帰らないよ。だって、子供じゃないから。いやまあ、年齢的には子供だけど。十六才だから半分以上大人だ。うん、まあブランコに腰かけてぶらぶら揺れている姿はすごく子供っぽいよ。自覚してる。身長も一五〇センチないし。顔もどちらかというと童顔だし。中学生、下手すれば小学生にすら間違えられることもある。高校生なのに。  だからといって、これはないんじゃないだろうか。スカートのポケットからアニメキャラのキーホルダーをとりだす。小学生とかが見てそうなアニメのマスコットキャラ。どこかで見たような気がするけど、思いだせない。  樋口くんもやっぱりわたしのこと、子供だと思っているのだろうか。だとすると、ものすごくショックだ。  樋口くんは、わたしと同じクラスの男子だ。いつも陽気で男女問わず気さくに話す人で、みなから好かれていた。わたしもその一人だった。いや、みんな以上に好きだった。
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