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「いやぁ、お見事ですな。」
「黙れ、ジェステル。」
アンヌを退室させた直後、空間を渡って現れたピエロ姿の悪魔ジェステルを、王太子シャルルは口をへの字に曲げ、不快そうに出迎えた。
「それより、契約はちゃんと解除するんだろうな?」
「もちろんですとも!アンヌの命の灯火が消えると共に。」
シャルルが自分のシャツをめくると、その二の腕にはアンヌのものと同じ逆五芒星がくっきりと描かれていた。悪魔と交わした契約の証だ。
「しかし、彼女をどうやって抹殺するおつもりで?結婚するのでは?」
「バカを言え、誰があんな百姓娘風情と結婚などするものか!」
不快そうに、シャルルは鼻を鳴らした。
「向こうと話がついてるのは事実だ。ゲルマニアの連中は我が国からの全面撤退と引き換えにアンヌを宗教裁判にかけて処刑することになっている。彼女の二の腕にも逆五芒星があるだろうから証拠は十分だ。」
「なーるほど。」
「祖国のために貴様と交わした契約もこれで終了というわけだ。清々するよ。」
雑に手を払って悪魔を追い払った美貌の王太子は、ベッドに入って久しぶりの安眠を貪った。
END
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