オン・ザ・マスク

10/11
前へ
/11ページ
次へ
ーー※ーー 「今日は楽しかった、ありがとう」  時刻は十八時を過ぎ、すっかり日が暮れてしまった。直樹と別れ彩希と合流した後、二人はショッピングを存分に楽しんだ。雑貨屋さんで小物を見た後は、洋服屋さんで服を見て回った。彩希が試着して出てくるところを待っている間など、自分が彼氏になったかのような気分になり、満足げだった。 「私こそありがとー。映画も見れたしショッピングも楽しかったし、卓也くんと遊べて良かったよ」  彩希も満足げで、卓也は今日のデートに手応えを感じた。だから、勢いに任せ言葉を繋いだ。 「よ、良かったらさ、また今度もどこか遊びに行かない?」  さあ、どうか。彩希の言葉を待った。が、これも拍子抜けするくらいあっさりした返事があった。 「うん、是非!また連絡するよー」 「ほ、ほんとに?」 「うん、約束だよ!」  そう言って、彩希は駅が向こうだから、またね、と手を振って、帰路についた。卓也も上気しながら手を振り、幸福感に包まれた。  時々振り返って手を振ってくる彩希の姿を見つつ、今日は酒でも飲みながら直樹に長電話してやろう、そう決めていた。久々のデートは大成功だ、卓也は噛み締めるように、何度も心で反芻させた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加