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「最後に映画館に来たのはいつ?」
ショッピングモールの最上階にある映画館へエスカレーターで向かいながら、卓也は例の如く質問をした。彩希は人差し指を顎につけながら、えーっと、と記憶を遡っているようだった。
「いつだったかなー、かなり前ってことだけは覚えてるけど。映画館も感染症対策ってことで休業したりしてたしね」
「そうだね、やっと営業再開した、って思ったら入場人数の制限もしてたし、映画館に来にくくなってたよね」
「そうそう、万が一映画館で感染しちゃったら、周りからすごく怒られちゃいそうだし」
「今日は鑑賞中もマスクが外せないね」
「だね」
映画館のあるフロアに到着すると、卓也はすかさずスマホの画面を開き、発券機へ予約番号を入力した。すぐさま手続きが完了し、二人分のチケットが発券された。
「えっ、卓也くん、チケット予約してくれてたの?」
彩希は驚いた顔をしている。この日のために、卓也は数日前からネットのチケット販売サイトでチケットを購入していたのだった。
「はい、彩希さんの分のチケット」
「ありがとう。チケット代返すよ、いくらだった?」
「今日は俺から誘ったからいいよ」
「でも悪いよー」
いいからいいから、と卓也は彩希にチケットを強引に渡した。これで好感度が上がるならチケットくらい安いものである、という計算もあった。
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