オン・ザ・マスク

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「ありがとう。じゃあ、ありがたくチケット頂くね」 「うん、じゃあスクリーンに行こっか」  そう言って、二人は劇場へと足を向けた。ここからが本番だ。映画も楽しみつつデートも頑張ろう、と卓也は気合を入れ直したのであった。 ー※ー 「映画、面白かったねー」  スクリーンから出て、彩希は満足げに歩を弾ませた。卓也としても、映画の出来には及第点というところだった。今話題のアクション映画で、目下活躍中の俳優が本格的なアクションに挑戦する、という謳い文句だった。確かにクライマックスは迫力がありメディアに取り上げられることも頷ける。ただ、ストーリーは良く言えば王道、悪く言えば何の捻りも無いもので、卓也としてはもう少し深みのある内容を期待していた。 「格闘シーンも迫力があっていい映画だったね」 「うん、主演の星野君、すごくかっこよかった!」  まるで少女のように目を輝かせる彩希に、卓也はこの映画を選んで良かったと思った。少々ありきたりな内容だったが、無難といえば無難な選択だったのかもしれない。 「彩希さん、喉渇かない?」 「ん?どうしたの?」 「よかったらどこかカフェでも行かない?」  これは卓也が兼ねてから計画していたプランだった。映画を見たあと、カフェで映画の感想や次に見たい映画など、映画談義に華を咲かせる。密かに卓也が憧れていたデートでもある。  が、彩希の反応は違った。 「えっ、うーん、飲食店は感染症が怖いからちょっと、ね」  やんわり拒否され、思わぬ反応に卓也は面を食らった。おかしいな、ネットにも映画デートでは定番のプランと書いてあったのに。軽くショックを受けるも、直ぐに気を取り直すよう努めた。
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