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「一番に父さんの見方をしそうな母さんはこちら側に付いたし、他の株主にも根回しを始めている。即座に追い落とすなんてしたら会社が傾いちゃうからできないけれど、とりあえずは、いまより好き勝手できなくなるだろうね。どう? 兄さん。少しは僕のこと見直してくれた?」
父親の独断を封じる計画を克巳に打ち明けた敦史を、どうやら純粋培養のお坊ちゃまは、いつの間にか卒業したらしい、と、嬉しそうに笑う克巳を、亜弥は微笑ましげに見つめる。
兄弟っていいな。
幼い頃は仲の良かったはずの従姉妹とは、すっかり疎遠になってしまった。親戚の人たちも同様に。身内と呼べる相手がいない亜弥には、眩しげに弟を語る克巳が、ちょっぴり羨ましい気もする。
「だから俺も少しだけ方針を変更していまは会社に残り、敦史を手伝う」
もちろん、正直なところを言えば、敦史とこの計画を進めれば将来的に、克巳が準備をしている展開が容易になるだろう展望もあるという。
俺はもう独りではないから。
「うん」
亜弥。愛している。
俺とおまえと、産まれてくる俺たちの子どもと一緒に、幸せになろう。
晴れやかな克巳の笑顔に釣られて、亜弥も笑った。
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