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牧場くらいしか知らないゆで卵にとって、世界はとてもとても広いものでした。
風は気持ちがいいし、太陽の光はポカポカして温かいし、道には色とりどりの花が咲いていました。なんだかいい匂いもします。
草花の香りを吸い込んで、ゆで卵は深く息を吐きました。新しい人生のはじまりです。
ゆで卵は空を見上げると、さっそく太陽に聞きました。
「太陽さん、太陽さん。どうすれば早く鳥になれますか?」
太陽は困りました。ゆで卵は鳥にはなれないのです。だってゆで卵だから。
(それはムリだって)と思いましたが、ゆで卵があまりに無邪気だったので本当のことが言えませんでした。
「それはね、たくさん陽を浴びることだよ。そうすれば私の偉大な陽の力が奇跡を起こす……かもしれない」
言われた通り、ゆで卵は毎日たくさんの日光を浴びました。
でも、なかなか鳥にはなれません。今度は山に聞いてみることにしました。
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