夢見るゆで卵

「山さん、山さん。どうしたらボクは鳥になれますか？」

「私を越える体力がないととても鳥にはなれないよ」

　ムリだと思いました。だってゆで卵ですよ。山は大きいし険しいし怖い動物もいっぱい。
　それでもあきらめきれなかったゆで卵。とうとう、気合いと根性で山を登りはじめました。
　うっかり転んであっちへコロコロ。こっちへコロコロ。池にポチャン。

　しかし、ゆで卵は自分を信じていました。

　三年の月日をかけて、なんとか山越えを達成したのです。そのうち登山が趣味になって、別の山にも登りました。
　けれども、まだ鳥にはなれません。

「おかしいな。おかしいな。そろそろ、羽くらい生えてもいいのにな」

　ゆで卵は旅の途中にあった川に聞きました。

「なんでも知っている川さん、どうか教えてください。ボクが鳥になるにはどうすればいいの？」

「海へ行ってごらん。着く頃にはきっと鳥になってるよ」