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ゆで卵は泣きながら陸にあがりました。
「みんなボクにウソをついていたんだ。ゆで卵は鳥にはなれないってどうして教えてくれなかったの? お陰で、ボクはすっかり古くてマズい卵になってしまった」
傷ついたゆで卵はすっかりやさぐれてしまいました。そして、今度は自分がみんなをだましてやろうとウソを付きはじめました。
「太陽は西から昇るんだよ」
「あの山のキノコは毒があるよ」
「川の水はしょっぱくて飲めないよ」
そうやってゆで卵はウソを言い続けましたが、ウソを言うほど心にポッカリと深い深い穴があいていくのです。
ゆで卵はむなしさを覚えました。自分はなんのために生まれてきたんだろうと思いました。
詩を書いたり哲学を学んだり禅問答をして、ゆで卵は初心に帰りました。
人間に食べられるために生まれてきたのなら、美味しく食べてもらうのです。ただ、ゆでてから何年もたった卵を食べてくれる人なんていません。
ゆで卵は自分を食べてくれる人を探しに、再び旅に出ました。それは終わりの見えない、果てしない旅のはじまりでした。
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