夢見るゆで卵

7/7

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「そうか。わしはゆで卵が大好物なんだ。ありがたくいただこうかな」  おじいさんは、わかっていてゆで卵を食べました。 「ああ、美味しいなぁ。こんなに美味しいゆで卵なんて、生まれてこのかた一度も食べたことがない」  大ウソです。  何年も旅をして引き締まったゆで卵は、もはやハードボイルドなんて言えないほど固かったのです。  それでも一生懸命に噛み砕くと、おじいさんの口から光が溢れました。口から飛び出た光は村を突き抜け山に沿って川を横切り、海まで届きました。  太陽と山と川はビックリしました。奇跡ってあるんだなぁとただただ呆然としていました。  寝たきりだったおじいさんはゆで卵を食べて病気が治りました。  ゆで卵は太陽の光と山のパワーと川の清らかさを吸収したスーパーなゆで卵だったからです。  鳥にはなれなかったけど、普通のゆで卵の百万倍のエネルギーを持っていたのです。  おじいさん一家を幸せにしたゆで卵の魂は、満足して空にあがっていきました。  その姿は徐々にうつくしい白い羽を生やした小鳥になって、飛び去っていきましたとさ。      ― おしまい ― <山頂にて御来光を臨む>61d69d71-9a01-4dfd-960c-c5cf40808a42
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加