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「愛妻家がウリの父にとって少女売春の報道は致命的でした。ラブホから出てくる瞬間を撮られたんじゃ言い訳できませんよね、アレも遊輔さんが撮ったんですか」
蓮見が買った少女は遊輔の知人だ。記事では女子高生と書いたが実際は成人済み。
「親父の復讐か」
無言で一歩踏み出す薫。
その後ろから人影が湧く。数時間前までカウンターで飲んでいたサラリーマン。
「聞きましたよ大ウソツキめ。あ、あんたのせいでミゼルちゃんは業界を追放されたんだ」
「ミゼルって枕営業してた地下アイドルの」
「それはデマだろ!」
サラリーマンがヒステリックに地団駄踏む。薫が辟易した表情でとりなす。
「カウンターの裏に隠れてろって言ったのに」
「君がぐだぐだ回り道して核心に踏み込まないから!やり方がぬるいんだよ、人を貶めることしか知らないゲスなマスゴミなんか殴る蹴るして吐かせりゃいいんだ。でもいい、もういい。さんざんゴシップ捏造してたって認めたんだ、証拠は十分だろ」
手には特殊警棒が握られている。
「ミゼルちゃんを汚しやがって」
最初からグルだったのか。
薫が遊輔に薬を盛り、閉店後に共犯を引き入れた?
「待てよ逆恨みだ、あの娘は本当に」
「うるさい!!」
サラリーマンが奇声を発して腕を振り抜く。
遊輔が転がり逃げた床を風切る唸りを上げて警棒が穿ち、憤激に駆り立てられたサラリーマンが叫ぶ。
「ミゼルちゃんが!僕の天使が!地下アイドルの姫が!枕営業なんてするわけないだろ!!」
人間は信じたいことしか信じない生き物だ。
知りたいことしか知ろうとしない手合いに、余計なお世話な真実を無理矢理突き付けたら―
「二度と記事を書けないようにしてやる!」
「!?ッ、」
狙いは腕。
まともにくらえばへし折れる。
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