悪魔の友情

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 昔、世界は二つの国に分かれていました。それぞれの国には王子がいて、北の国の王子はカイ、南の国の王子はムーといいました。  二人はとても美しい少年の姿をしていましたが、実は悪魔だったのです。  王子たちは物心がつくようになると、家臣たちを殺すようになりました。それから義理の父王、母妃をも殺してしまい、挙句の果てには国中の人々をも皆殺しにしてしまい、国を滅ぼしてしまいました。   やがて、地上には二人の悪魔の少年しか残らなくなってしまいました。動物たちも消え、森も美しい花たちも枯れました。  王子たちは、廃墟になったそれぞれのお城で暮らしていました。  カイ王子もムー王子も、それぞれのお城でたった一人きりで暮らしていたので、旅に出ることにしました。カイは南へ、ムーは北へ向かいました。すると北の国と南の国の丁度真ん中にある神秘的な泉で、二人は出会ったのです。二人はお互いの存在にとても驚きましたが、すぐに仲良くなりました。境遇が全く同じだったからです。  二人はカイ王子の北の国の廃墟のお城に住むことにしました。それからと云うものの、カイとムーはいつも一緒でした。二人は悪魔なので、とても悪い遊びを毎日していました。昼はお互いの血を啜り合って、夜は水晶で出来ている寝台で寄り添って眠りました。  神様は当然、二人のことを許すはずがありません。神様は遠く雲の上から地上の様子をご覧になられていたらしいのです。  神様は大天使を呼び、二人の悪魔を懲らしめるように言いつけて、地上に遣わしました。   ある日、北のお城に、一人の大天使がやってきました。  大天使は、弓を引き絞り、銀色に光る硝子の弓矢を、カイの心臓に向けて放ちました。ところが、ムーがカイを庇いました。  悪い事しかしない悪魔でも、二人の友情は何よりも深く、お互いの為ならばどんな事でもしたのでした。それを見ていた大天使は、二人の事をお許しになって、城を去って行きました。  カイはムーを起こそうとしましたが、彼はきつく眼を閉じて、いくら呼んでも、眼を開きませんでした。   大天使の硝子の弓矢は、命を奪うことはありませんが、永遠に眠り続けてしまういう薬が矢に塗られていたのです。  カイはとても独り切りでは生きてゆく事が出来ないと、思いました。  天使が去った後、しばらくは哀しみに暮れていました。ところがカイは、キラキラと光る物が落ちていること気づいkかいた。天使が忘れて行った、硝子の弓矢です。  カイは弓をそっと広いあげると、自分の心臓に構え、矢を放ちました。  こうしてカイ王子もムー王子も、いつまでも眠り続けたのです。  そして今でも、この世界の何処かで、二人は永遠に眠り続けているのでした。
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