鈴木くんのうそと佐藤さん

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 ということで、悲しいことに作戦が成功してしまった結果。  隔週で開催される映画サークルの鑑賞会の後。こうやって、おれはファミレスで佐藤とふたりきりで話す権利を得たのである。 「今日の映画の世界観は、アレス的にどうだったの?」 「そうだな。魔法の理論が浅いと思った」  おーい。どの口が言う。この口だよこの口。 「ところで佐藤はどうして、そんなに異世界のことに興味があるんだ?」  不意に疑問を口にしてみる。  もう大学生なんだ。ファンタジーと現実の区別くらいはついているだろうに。  すると高さのあるストロベリーパフェを細いスプーンで器用に食べ進めていた佐藤は、その手を止めた。 「実は」 「……実は?」 「中学生の頃いじめにあってて、学校にほとんど行けてなかったんだ。そのとき、家でずーっとファンタジー小説を読んでて。あぁ、もし自分がこの本の登場人物だったら、って思ってたんだよね」  うぉっ。  伏せ目がちな仕草もかわいいぞ、反則だぞ佐藤。 「そっか……。なんだか悪いことを聞いちゃったかな。ごめん」 「ううん。アレスになら聞いてもらえると思ったから」  ※鈴木です。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加