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ということで、悲しいことに作戦が成功してしまった結果。
隔週で開催される映画サークルの鑑賞会の後。こうやって、おれはファミレスで佐藤とふたりきりで話す権利を得たのである。
「今日の映画の世界観は、アレス的にどうだったの?」
「そうだな。魔法の理論が浅いと思った」
おーい。どの口が言う。この口だよこの口。
「ところで佐藤はどうして、そんなに異世界のことに興味があるんだ?」
不意に疑問を口にしてみる。
もう大学生なんだ。ファンタジーと現実の区別くらいはついているだろうに。
すると高さのあるストロベリーパフェを細いスプーンで器用に食べ進めていた佐藤は、その手を止めた。
「実は」
「……実は?」
「中学生の頃いじめにあってて、学校にほとんど行けてなかったんだ。そのとき、家でずーっとファンタジー小説を読んでて。あぁ、もし自分がこの本の登場人物だったら、って思ってたんだよね」
うぉっ。
伏せ目がちな仕草もかわいいぞ、反則だぞ佐藤。
「そっか……。なんだか悪いことを聞いちゃったかな。ごめん」
「ううん。アレスになら聞いてもらえると思ったから」
※鈴木です。
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