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そこは電気屋にしては異様なスペースだった。壁に少し開いているアンティークな扉がついている。中を覗いてみると、ソファやアナログテレビが見えた。さっきここを通った時には、こんな場所はなかった気がする。
なんとなく気になって、僕は扉の中に入った。改めて部屋の中を見渡すと、やはり少し異様だった。まるで一昔前の外国のリビングのようだ。ドラマのセットみたいなのに、どこか生活感がある。
奥の方を覗いてみると、キッチンがあった。調理器具とレトロなラジオが置かれている。
もしかしてここは、レトロな家電を扱うコーナーなのだろうか。
よく聞くと、ラジオが鳴っている。雑音混じりに女性の声が流れている。どうやら何かのニュースのようだった。
「…リギヴィズは、今日も曇りです。街では…」
ラジオから流れてきたのは、聞きなれない地名だった。僕は思わずギョッとした。これは何かの演出なのだろうか。それにしてもリアルだ。
だんだん気味が悪くなってきた。不気味に思った僕は、部屋から出ることにした。入った扉から外に出る。
「…え?」
扉の向こうは、電気屋の店内ではなかった。人気のない街中、それも外国のような街並みが広がっていた。
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