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キッチリ五限目まで受けてマンション前で紗香に手を振って別れた
エントランスホールを抜けようとしたところでソファに座って背を向けていた男性がこちらを向いた
「お帰り」
「・・・た、だいま」
「待ってた」
そう言って立ち上がった尋は
「飯、行こうぜ」
近づくとサッと肩を抱いた
ふわりマリンの香りに包まれる
「巧は?」
「あ゛?巧は居ねぇ」
なに?どこが不機嫌のポイント?
片割れのことは禁句だったっけ?
「巧はどーでも良いから飯」
「・・・あ、うん。どうせ外食だから良いわよ。荷物だけ」
この勢いだと部屋に荷物を置きに帰る暇はない
コンシェルジュに荷物を預けると尋は「行くぞ」と歩き始めた
「戻らなければどうしてたの?」
肩を抱かれているから距離感に戸惑いながら口にする
「戻るだろ」
答えになっていない
連絡先を交換したのに文明に頼らないとか尋の頭の中はどうなっているのだろうか
それに・・・
「歩幅合わせて欲しい」
立ち止まって文句を言いたくなるくらい歩くのが早い
いや・・・早いじゃなくて脚の長さが違うからか
「あ゛、あぁ、悪りぃ」
途端に緩まるスピードにホッとしながらもなんだか落ち着かない
「・・・どこ行くの」
「考えてねぇ」
「・・・は?なに?強引に誘いながら、まさかのノープラン?」
「んなの行き当たりばったりで十分だ」
気の赴くままの野生児に先が不安になった
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