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一体何人くらい厳ついのが居るんだろうか
其処彼処に配置された男性に時折すれ違う男性
尋に頭を下げる男性全て“厳つい”
「ねぇ、厳つい顔面接とかあるの?」
クスクス笑って尋を見上げても
「意味不明」
全く取り合ってもらえなかった
「残念」
そう思ったところで足が止まった
龍が睨みをきかす襖絵の前
門番のように立っている厳ついさんが尋に頭を下げるとそのまま襖を開いた
「・・・っ」
見えたのは如何にもの和室
そこに着流しで座る紅太は初めて会った日のような冷たい空気を醸し出していて
喉がヒュっと嫌な音を鳴らす
尋は私の肩を抱いたまま中へと入った
向かい側に腰を下ろすと肩に乗っていた手がようやく離れた
慣れたとは言え尋も紅太と似た雰囲気を持っているから
なんだか居心地が悪い
「愛から聞いた」
そう口を開いた紅太は
「此方の事情に巻き込んで悪かった」
と頭を下げた
「・・・」
なんと答えるのが良いのか悩んでいるうちに
「怪我はどうだ?」
質問がきて
「・・・腫れてただけ、もう平気」
特に返事を求めていないんだと完結する
「生まれて初めて叩かれたんじゃないのか」
「・・・・・・はい」
重過ぎる空気に気がつけば手を握りしめていた
これ以上此処にいると精神的にやられる
隣に座る尋に助けを求めようと見上げたのに肝心の尋は気づいてはくれない
「飯、行くか」
紅太の誘いに視線を戻した
濃紺の着流しに無造作に流した髪
顔の前に落ちた僅かな前髪は綺麗な顔に陰影さえつけている
どこまでも綺麗な男
鋭い双眸さえその雰囲気には合っていて
やっぱり“綺麗”という表現がしっくりきた
誘われたのに不躾な視線を向けたままの私に
「穴が開きそうだ」
紅太は漸く表情を緩めてフッと笑った
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