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鳥居の奥
森の入り口に鳥居があるのは珍しいと思う。森の中に神社があるのなら何ら不思議ではないが、この森に人工物は一つもない。遥か昔に神社があったという資料もない。特別な何かがあるわけでもないのに、どうしてこんなところに鳥居が存在しているのか──まったく情報がないから、町の七不思議の一つとして噂されている。
そうだ、弟のために動画でも撮ってやろう。小学二年生の弟のクラスでは七不思議で盛り上がっているらしい。高学年にもなると七不思議の類は馬鹿らしくなって話題にも上がらない。数年前は誰もが話していたのにな。
一抹の寂しさを感じながら、買ってもらったばかりのスマホを鳥居に向ける。録画ボタンを押して十秒ほどの動画を撮る。真昼間の鳥居の動画なんてつまらないだろうけど、好奇心旺盛な弟なら喜んでくれるだろう。ベッドの上で飛び跳ねて喜ぶ姿が目に浮かぶ。
録画を終え、出来栄えを確認するために動画を再生する。明るいし、動くものを撮っていたわけでもないからちゃんと撮れていると思うけど、まだ使い慣れていないし念のためだ。
一秒、二秒、三秒……と過ぎたところで異変に気付く。
鳥居の奥の森。
いや、森ではない。
木だと思っていたものに赤い線が描かれている?
よく見るとそれは、目から赤黒い涙を流している無数のこけしだった。
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