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「ごめんな、引き留めて。ありがと、やる気出た」
朝子は小さく首を横に振る。
そんな仕草ですら愛おしい。
「じゃあ、また明日。今日は疲れただろうから、ゆっくり寝ろよ」
「はい。……あの」
「ん?」
何か言いにくいことでもあるのだろうか?
言葉を探しているのか、朝子は視線を彷徨わせながら、ほんの少しだけ唇を噛んだ。
「もしかして、嫌だった?」
そう聞いたら間髪入れずに、今度は大きく首を横に振った。
「それならよかった」
「……信太朗さん、私のことで無理してませんか?」
「え? 何が?」
「私、信太朗さんの“彼女”できてるのかなって思って」
「なんでよ、当たり前じゃん。どうした? ちょっと、そこ座って。ちゃんと話そう」
「す、すみません! いいです、変なこと言いました! まだお仕事あるのにごめんなさい」
そう言って、逃げるように立ち去ろうとするもんだから。
「あっ」
思わず後ろから捕らえるみたいに抱き締めていた。
「待って。大丈夫だから話して。なんか言いたいことあるんでしょ?」
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