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「もしかして、俺が我慢してるって思ってる?」
俺の言葉に、朝子は小さく頷く。
――愛おしい。
それ以外の言葉が思いつかない。
思わず、朝子を抱きしめる腕に力が入る。
「もっと、大人な付き合い方ができればよかったんですけど。どうしていいかわからなくて」
朝子の声が震えていた。
俺が気づかないところで、相当悩んでいたのかもしれない。
まさか、彼女がそんなことを考えていたなんて思いもよらなかった。
「まぁ、たしかになぁ。さっきとか今とか、朝子に触れられて幸せだし。そのうちいつかは、もっと先までって思うけど。焦らなくてよくない? 初めてなんだったら尚更、大事にしたいじゃん」
「でも……」
誰かに何か言われたんだろうか?
こんな風になかなか納得してくれないなんて、普段の彼女らしくない。
「俺たちのペースでいいと思うんだけど。誰かと比べるものでもないしさ」
そう言いながらも、学生の頃は俺も気にしてたなぁ。
初体験がいつだとか、付き合ってどれぐらいでしたとか、そんなくだらないことで盛り上がっていたっけ。
そういうのを気にするのは男だけじゃないんだよなぁ。
「本当に、我慢してませんか?」
「してないって」
「無理してない?」
「してない、してない!」
尚も疑っているような雰囲気を醸し出していたから。
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