ドラゴンの執事

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「お嬢様に兄はいない!」 その叫び声と共に2人の間に割って入った執事は、ジェマを片手で抱え上げると大きく飛び(すさ)った。 「アーロン!?」 「アーロンだと?お前は裏切り者の勇者アーロンか!」 「勇者?」 少女は不思議そうに自分を抱える執事を見上げた。 「消えろ」 執事がジェマを脇に抱えながら、左手を横になぎ払う。 するとその一閃で、隊長と藪に隠れていた兵士達はあっと言う間に吹き飛ばされる。 「ねぇアーロン、勇者って何のこと?」 心配そうに尋ねるジェマを執事はそっと地面に降ろした。 「お嬢様にはいつか話さねばならないと思っておりました。これは昔話です。ある国王が重病になりその病を治すため、滋養のある龍の卵をとってくるように勇者に命じました。勇者は死闘の末、龍を殺し卵を奪った。国王は卵を食べて回復したが妻子を殺された父龍は怒り狂い、王国を焼き払った。龍は勇者も殺そうとしたが、勇者の懇願を聞き入れ彼の産まれたばかりの赤ん坊と引き換えに、世界を滅ぼすことだけは思いとどまってくれた。それが12年前のことです」 老執事は片膝をつくと、ジェマを見上げて続けた。
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