ドラゴンの執事

｢貼り紙を見て来た子だね？早速だけど、水汲みして床磨いて！仕事はそこのアリスに聞いておくれ｣

一方ジェマはパン屋に出勤早々、挨拶もそこそこにおかみさんに言われた通り、せっせと働き始めていた。

｢アリスさん、モップ掛け終わりです。次は何しますか？｣

｢そんなの自分で考えたら？｣

｢でも、おかみさんは……｣

｢指図されなきゃわかんないの？そんなの社会の常識でしょ！｣

ジェマはあまりの言われ方に涙ぐみそうになる。

アリスはジェマより３歳ほど年上に見るが、ジェマと仲良くする気はなさそうだった。

｢私、龍(ドラゴン)に赤ちゃんの時から育てられたから人の常識がわかんないもん。だから怖がらないで人に馴れなきゃ、人に合わせなきゃ。仕事は絶対やり遂げないと｣

それでもジェマは唇を引き結び、自分で思いつく限りの仕事を次々にこなして行った。