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「昼ご飯、これあげるわ」
ジェマにとっては長かった午前の仕事が終わり、漸く昼休みになった。
店の隅でへとへとになってバスケットを開いたジェマに、アリスが打って変わった満面の笑みで、パンを手に近寄って来た。
「え、あの、私は爺やがお弁当を作ってくれたので……」
途端にアリスの眉がピクンと跳ねた。
「爺や?そう言えばアンタ、店の角で立派な馬車から降りて来たわね?隠れたってちゃんと見てたわよ!」
ジェマはなぜアリスがこうも怒るのかサッパリ解らない。
これは謝るべきなのか?
「すみません」
ジェマが意味が解らず詫びるとアリスは口元を嫌らしく歪めた。
「じゃあ、食べてくれるわね?私、貴方と友達になりたいの!」
何だ、そうだったのか。
これが人の友達の作り方なのかな?
「では、遠慮なく」
ジェマは喜んで狐色のパンを受け取ると、ぱくっと一口囓った。
ふんわりとしてバターの香りが香ばしい。
これ、美味しい!
ジェマが感激を口にしようとしたその時。
「ママ!大変!コイツが商品を盗み食いしてる!」
アリスは笑いながらジェマを指さすと、大声でおかみさんを呼びつけ出した。
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