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「ジェマは寝たか?」
「はい、大変お疲れのご様子でした」
昼過ぎには館に戻ったジェマは、父親が開いてくれた誕生パーティーに元気一杯に参加した。
深夜まで使用人達と賑やかにはしゃいでいたが、父親が見れば無理をしているのはすぐに解った。
「例のパン屋には余罪がございました。よその街や村から集めた臨時雇いの者らに何かと言い掛かりをつけ、賃金未払いのまま使い捨てにしておりました。係る悪徳業者にお嬢様をお勤めさせるなど、私の事前調査が不十分でした。お嬢様をあれほど怯えさせるとは……」
老執事は巨大な龍を前に、悔しげに頭を垂れた。
「人を恐れてしまったか。龍や魔物は平気なあの子が」
「その元凶たる奴らの処断は如何に?」
「消せ」
「御意」
主と執事の会話は非常に短い。
そして彼らの結論は激烈だった。
その夜のうちにパン屋は跡形もなく消失。
店の親子は行方不明となった。
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