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「森に侵入者あり!旦那様、人の軍隊です!」
「慌てるな、すぐに迎撃準備を!ジェマは念のためアーロンと避難しなさい」
「でも、父上!」
その頃、龍の館は蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。
「なあに久々に腕が鳴るわ。ジェマは何も案じるな。頼むぞ、アーロン」
「はい、旦那様」
老執事は一礼すると素早く少女を抱き上げて館を走り出る。
「父上ー!」
ジェマの絶叫が長く尾を引いて玄関ホールに反響した。
だが、その叫びが消えぬうちに館の裏口から軍隊がなだれ込んでくる。
「招きもせぬのに無粋な客めが」
龍の一喝が館全体を震わせる。
見上げるほどの巨大な龍に、兵士達は呆気にとられて一瞬動きが止まる。
「な、何を言うか怪物め!お前に二度とこの国は燃やさせん!」
「堂々と玄関から入る勇気もない腰抜けどもにわしが倒せるかな?」
龍がそう言いながら口を開こうとしたその時。
ジャラリと耳障りな金属音がしたかと思うと、全身にドス黒い鎖が蛇のように巻きついてきた。
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