霊の実在証明

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「明治44年のことだ。物理学者の山川健次郎(やまかわけんじろう)が、長尾郁子に対して行う予定だった念写実験用の道具が、」 「え……事前に入れ忘れたとかではなくて?」 「ああ、実際は助手が入れ忘れたらしい」  なんだ。怪奇現象かと思ったら、ただのヒューマンエラーじゃないか。拍子抜けだ。 「興味深いのはだね、実験道具を入れ忘れた助手は、とある新聞社の特派員で、しかもその新聞は当初から千里眼否定の立場で報道していたということだ。真相はどうあれ、スキャンダルじみたものを感じないか?」 「……たしかに、勘ぐろうと思えばいくらでも勘ぐれますよね」  実験を妨害したくて、わざと忘れたんじゃないか、とか。考えていけばキリが無い。 「これで終わりでは無いよ。更に数日後、もう1つ事件が起きた。心理学者の福来が用意した道具が、実験当日に何者かの手によって盗まれてしまったんだ」 「てことは、前と違って本当の刑事事件ですね」 「実際に警察に届け出たそうだからね。幸いにも、盗まれた道具は無事に発見された。その道具――写真フィルムが入ったダンボールの筒なのだがね、中には1枚の紙切れが入っていたそうだ。そこにはこのように書かれていた」  七緖先輩が、すうっと息を吸い込む。 「“カクレテイタスト、イノチハモラッタゾ”」
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