父と娘

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「ぐっ、覚えてないんですか? このマリアのリングは私が作ったことを!」  そう言って山本は私の首のリングに向かって叫んだ。 「マリア、開放!」  私の首からリングが砕け散る。 「これは俺の声でしか外せないよう設定しといたんです」 「マリア、今まですまなかった」  山本はそう言って床に倒れた。  リングが取れた瞬間私の頭に今までの記憶が流れ込んで来た。  博士に誘拐され洗脳、身体を改造されたこと、両親、研究所に来る前の記憶が鮮明に蘇る。  その記憶の中に加賀と山本がいた。 「マリア、本当にすまない、君をこんな体にして加賀と二人で君を助け出す方法を考えてる」  山本は私の目をじっと見つめ語りかけてくる。 「今は何を言ってるか分からないだろうがもう少し待ってくれ」  二人は笑顔で私の頭を撫でてくれた。 「山本さん、ありがとう……本当にありがとう……」  私は山本さんの前に膝をつくと何度もお礼を言った。 「マリアガ記憶を思イ出シタ? ソンナ訳ハ無イ! リング以前ニ私ノ洗脳デ、記憶ヲ消シタノダ! 思イ出スハズガナイ」  私は耳障りな声を聞き立ち上がってソレを睨んだ。 「いいえ、私は全部思い出したわ、あなたにはもう従わない」 「私ノ研究ハ完璧ナノダ!」  私の前でのたまうソレに私は見下しながら嘲笑った。 「完璧? じゃ何であんたそんな姿してんのよ」  私はソレの上に足を乗せた。 「マリア! 私ヲ殺ストオ前モ死ヌゾ! コレハ研究ノ初期段階ニ心臓ニ……」 「知ってるわよ、でも、罪は償わないと」 「私が一緒に地獄に言ってあげるよ、お父さん」  私は水槽に置いた足に力を込め、一気に踏み抜いた。  ありがとう、山本さん、加賀さん。  それとごめんね、本当のお父さん、お母さん、  私は皆に謝り、お礼を言うと、事切れた。
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