父と娘

9/10
前へ
/10ページ
次へ
「山本は孤児院で院長をしています、人からの評判も良いそうです」 「ソウカ、ツマラナイコトヲシテイルモノダ」  私達は孤児院に着くと堂々と中に入っていった。 「イマハ子供モ、中ニイルヨウダ、都合ガ良イナ」 「ええ」  私は孤児院に入ろうと扉に手をかけた時、博士が静止した。 「マリア入ル前ニ、火ヲツケロ、一人デモ逃ゲラレタラ面倒ダ」  私は首のリングに手を当てると従った。  中に入って山本を出すように脅すと山本はすぐに駆けつけてきた。 「マリア、と博士ですか……」 「山本、久シブリダナ、今日ココニ来タノハ……」 「あなたのことだ、あの事故は他人のせいだと決めつけ、あの時の研究員を殺して回ってるのでしょう」  博士の言葉に被せるように山本は睨みながら言った。 「流石ダ、山本、ヤハリオ前ハ優秀ダ」  すこし場が沈黙した後博士は山本を褒めた。 「ダガ、今ノ言イ方ハ良クナイ、他人ノセイ?」 「ええ、あれは事故ですよ、あの場の研究員はあなたの指示を守ってました」  山本は確信を持って毅然と言い放った。 「何ヲ言ッテイル、私ノ実験ハ完璧ダ! 事故ナンテ起コルハズガナイノダ」  博士は怒り叫ぶが山本の態度は変わらない。 「私達は事故が起きないように徹底してました、あなたは少しのミスで研究員に激怒し、解雇してましたからね、そういう場面を見てた僕達は協力してたんです、加賀も田所も」  そういうと山本は悲しそうに言った。  ジリリリリリ――火事です、火事です。  音と共に警報が鳴り響く。 「オ前ヲ売ッタノハ、ソノ加賀ダ」 「マリア、ココニイル全員殺セ」  それを聞いた山本は決意を込めた目でこちらを睨んだ。 「博士そんなことはさせません! 加賀は僕に託したんです」  そう言って山本はこちらに向かい走ってきた。 「何ガ託シタダ、マリア山本ヲ殺セ」  私は山本の腹に腕を突き立てた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加