週末がない!

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週末がない!

「あれ? 週末がない!」  日曜日の夕方、僕は週末が消え失せてしまっていることに気づく。テーブルやベッドの下、キッチンの食器棚と冷蔵庫のすきま、それに念のため、カバンや机の中も探してみたけれど、週末は部屋のどこにも見つからない。 「ここに置いていたはずなんだけどなあ……」  夕方の黄色い光が部屋を染める。僕は光の中に立ち尽くし、黄色く染まった床を眺める。そこにあった週末の姿を思い浮かべながら。  ひさびさにまとまった週末が手に入ったため、僕は週末を部屋に置いていた。先週は仕事のあとに部屋に帰ってきては、週末を眺めて過ごした。さてこの週末をどう使おうかと。  今が真夏ならば、太陽の光を目いっぱい受け止めた海へとためらいもなく飛び出し、今が真冬なら、銀色の雪に染まったイルミネーションの輝く街へと迷いなく飛び出すだろう。  そんな想像を呼び起こす週末が、知らず知らずのうちに失われてしまったのだ。
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