十七歳の春

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 翌日。  わたしは一人、公園のベンチに座っていました。空はどんよりと曇り、今にも雨が降って来そうでした。うつむいているわたしに、誰かが声をかけて来ました。 「こんなところで、何をしてるの?」  サクラさんでした。サクラさんの顔を見た途端、わたしの目からぽろぽろと涙がこぼれ出ました。サクラさんは、そっとわたしの隣に腰掛けました。 「……彼にふられました」  わたしは、言葉を絞り出しました。 「やらせてくれないなら、いらないって。せっかく女子高生と付き合ってるのにって」  彼は確かに下種な男でした。だけど、わたしが本気で好きになった人でもありました。 「しっかり泣いておきなさい」  サクラさんは、そっとわたしの頭を撫でてくれました。 「ちゃんと泣いて、思いを後に残さないようにね」  わたしはそのまま、その場で泣いていました。サクラさんは黙って、わたしの側に寄り添ってくれていました。いつの間にか降って来た雨の中、わたしはサクラさんが差し掛けてくれていた傘の中で泣き続けていました。  その雨は、桜をほとんど散らしてしまいました。桜が散って、サクラさんはまた去って行きました。
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