6章 「きみには関係ない」

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「弱みだよ。人に握られるような弱みが、きみにはある?」  遠山にそう問われて、ふいに安西のことが頭に浮かんだ。が、すぐにそれを打ち消す。 「……あるわけないじゃないですか」 「だろうな」 「遠山さんにはあるんですか、弱み。さっき清多さんに言われていたでしょう、経歴がどうのって」 「……さあ。広瀬が死んだとき浅沼と揉めたから、その件だろう」 「ああ、なるほど」真実は納得した。 「そうだ。わたし、ひとつ気になることがあるんです」 「今度は何だ」 「その、まずいハーブティーのことです。千鶴子さんはあれをローズヒップティーだって言っていましたよね」 「ああ、地下街の紅茶専門店で買ったとかって」 「おかしいんですよ。うちもそのお店で購入しているんですけど、あんな味ではありません。確かにあのお店は好みや体調に合わせて茶葉をブレンドしてくれるけど、でも……」 「でも?」 「お茶の味じゃない気がするんです。お茶以外の何かが、あの中には入っている気がします」 「お茶以外の、何か……」  遠山はしばらく考え込んで、
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