6章 「きみには関係ない」

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「たとえばだよ。羽田さんがローズヒップティーを千鶴子さんに飲ませる習慣を始めたのは、再婚してすぐの頃だ。彼女が体調を崩したのもそれから。羽田さんは普段から台所に立つことなんてなかったのにも関わらず、ローズヒップティーだけは毎日欠かさず自分の手で淹れていた。いくら千鶴子さんの健康のためとはいえ、すこし怪しいと思わないか?」 「羽田さんが、千鶴子さんにおかしなものを飲ませていたっていうことですか」 「きみの味覚が正しいとすれば、その可能性はある」 「でも、自分の奥さまに、そんなこと……」 「この国で起こる殺人の大半は家族間でだというよ。めずらしい話じゃない。それに『エルム』の店主は千鶴子さんだ。彼女が死ねば不動産が羽田さんのものになる」 「……よくそんな話を淡々と、平気でできますね」 「カドミウムって、聞いたことあるか」 「便所コオロギですか」
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