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1章 「きみたち、付き合ってみないかね?」
「おまえ、このクソ暑いのによくそんな格好できんな!」
遠山が病室に顔を出すなり研一が言う。
六月のよく晴れた日だった。 見舞いに来ていた研一は、夏らしい明るいオレンジの、やはり半袖のシャツに身を包んでいる。パンツは涼しげな七分丈。そんな彼からすれば、遠山のいまの服装は異常に見えるのに違いない。手首のところできっちりとボタンを留めた長袖のシャツ。しかも生地の色は真っ黒。遠山はこの気温の高いさなか、そんな暑苦しい服装でやってきたのだ。
「おまえ、夏服くらい買えねーのか。バイトしてんだろ?」
「これが夏服だ」
「いつもと変わらねえじゃねえか」
「生地が少し薄い」
「……」
遠山は窓際に椅子を置いて座り、研一とはベッドを挟んで向かい合う形になった。研一は「あー、ヤダヤダ。見てるこっちが暑くなってくる」と顔の前に手をかざして、遠山を視界からシャットアウトした。パパラッチのフラッシュを嫌がる俳優のような仕草だ。
「……おまえの友だち、マジでおかしいよ。庸介」
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