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いつもより 丁寧に身支度をしなおす バイトだからラフな格好なのは否めない 化粧なおしもして 外にでで ちょっと香水を足す 久しぶりに誘われて 舞い上がって気合い入りすぎる自分に笑ってしまう 何度か来たことのあるドアのまえで 呼吸を整えて チャイムをならす 「はーい」ドアが開いて コーヒーのいい匂いと一緒に宗くんが顔を出した 「どうぞ」 「お邪魔します」 心なしか緊張してしまう  テーブルにかわいいカップケーキが置かれている  「はいどうぞ」と宗くんがコーヒーを置きながら椅子を示す 「ありがとう」そう言って何度か座ったことのある椅子に腰をおろす 「いい匂い いただきます」 コーヒーを一口くちにする なんだか視線を感じて宗くんを見ると ばっちり目が合う 「あっ ごめん コーヒー美味しい?」宗くんはあわてて視線をそらしながら たずねてくる 自分もコーヒーを飲む 「うん 淹れたてだし 宗くんが入れてくれたから美味しい」そう言って しまったと思う なんか営業トークみたい 「そ そうかよかった ケーキも食べて」 よかった 宗くん気にしてないみたい なんだか落ち着かなくて ケーキも口に入れる あぁ 美味しい 思わず顔がほころぶ 「ふふ 口に合ったみたいでよかった」宗くんが嬉しそうに笑う  特に話すこともなくて 静かにケーキをいただく でも心地のいい時間だ ケーキを食べて お礼に洗い物はさせてもらう キッチンでお皿とフォークを洗っていると  「コーヒーもう一杯つきあってくれる?」と言われた 「うん」そう答える 洗い終わって手をふくと 宗ちゃんがそばまで来ていた なんか違う いつもの雰囲気と違う なんだかどきっとさせられる視線に動けなくなる 次の瞬間 宗くんの手が私の頬に添えられた 「え?…」
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