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何度か酔っぱらった宗くんを明生くんと家に送ったことがある 田辺くんは家が逆方向らしい 初めて宗くんの家に行ったときは 嬉しくて いろいろ観察してしまった 宗くんの部屋はわりと片付いてて 自炊はあまりしないといっていた  「おなかすいたらマスターんとこ行けばいいし」 サラリーマンでは無さそうな自由で不規則な雰囲気にちょっと心配になってしまう でも『女』の影がないことに自分でも驚くほどほっとしてしまう  「服は乾燥機から出して着る」と言っていたけど 窓際にかけられた何着かの服からは宗くんの匂いがした 明生くんに言われて冷蔵庫から お水を出して 宗くんのところにもってくと 「ありがと」と言って頭をポンポンされた 明生くんがいるのに 顔に集まった熱を隠しきれない 心臓の音も聞こえているかもと思うぐらいうるさかった お店でもこんなスキンシップをとったことなかったのに 宗くんの部屋でこんな風にされたら 明生くんの存在も 私の立ち位置も忘れてしまう 宗くんはなんてことないって感じだし 明生くんも気にしてないようだった 「明生泊ってく?」 「おぉ」2人の会話に我にかえる 「あっ じゃぁ私お店戻りますね」 「ごめんね送ってやれなくて」明生くんが顔の前で手を合わせる 「時間も早いし まだ人通りもあるから大丈夫」と笑ってみせた 心中では 『もう少し 宗くんと一所にいたい』と思った 後ろ髪引かれながら明生くんを羨ましくおもった
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