茜色の帰り道

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茜色の帰り道

茜色の空に、綿菓子の雲が複数流れている。 両手に荷物を、体には抱っこ紐で娘を抱えた状態で私は帰り道を歩いていた。 重くて大変だが、何度かやっている内に慣れたので苦ではない。 娘は色んな物に興味があるらしく、あちこちを見渡している。そんな娘の様子に私は少し口元が緩む。知的好奇心が芽生えている証だと思う。成長している証である。 娘を一時保育に預け、私は今日会社の退職に必要な手続きをして職場にも別れの挨拶をしてきた。理由としては娘を預けられる場所を確保できず、復職の目処が立たないためだ。 職場の人間には色々言われるかと身構えてはいたが、優しい言葉をくれたので少し安心した。 私もやるだけやったが保育園に入れなかったのだ。こればかりはどうしようもない。 過ぎたことを言っても仕方がない。これからの事を考えよう。 私は自分に言い聞かせて道を歩き続けた。
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