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そう思い
振り返ると何故だろうか
男達は笑っていた。
「杏ちゃんコッチ!」
突然走り出した紗羅ちゃんに腕を引っ張られて、行きたい方向とは別の方へ身体が動く。
「ちょ、ちょ!公園いくんやろ?」
「あの人たち、公園の方から後つけられてたから」
え?そうなん?
「いや、でも。逃げなくていいよ。悪いことしてるのコッチじゃないし。戻ろうよ」
手出してきたら自己防衛するだけやし。
山道の方へ歩こうとする紗羅ちゃんを引っ張って、元の場所に戻ろうとしたが紗羅ちゃんは足を止める。
えっと?
「怪我した?」
下を俯く紗羅ちゃんの顔を横から覗き込んでみると、なぜか涙を流していた。
「え?待って?どういうこと?ごめん。何かされてた?」
ポロポロと溢れる涙
ハンカチなんて女子らしいものが入っていないこの鞄。
紗羅ちゃんの涙を拭うものは無い。
「違うの…」
なにこれ?
泣いちゃうような出来事あった?
突然の出来事に戸惑い、そしてあたしは、周りへの注意を欠いていた。
「ごめんね、杏ちゃん」
最後に見たのは、涙を浮かべて、申し訳なさそうな顔をした紗羅ちゃん。
そして身体に痺れる痛みを感じて、あたしは地面に倒れた。
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「電気強すぎたんじゃない?」
「…あんたがこの電圧でって言ったんだろ?気絶したじゃん。俺らが運ぶの?」
「当たり前でしょ?水瀬は何処?あたしは、水瀬に話があるんだけど」
な、にこれ
人ごとのように、会話だけがあたしの頭上で繰り広げられる。
アホちゃう?
「人のこと無視して…話進めんなクソ」
身体に力が入らへん。
「おいおい…この電気くらって動けるって化物じゃん。さっさと運ぼうぜ?暴れ出されたら困る」
「…触んな」
首の下と膝の裏に誰かの手が入ってくる。
こんなお姫様抱っこ嫌や
身体が痺れて痛い
こんなタイミングやと思わへんかった。
てゆうか、ようみたらこの男…
さっきナンパしてたやつやん。
全部、仕組まれてたんか
ダサいなぁ、ほんまに。気づけへんかった。
辛うじて動かせる目蓋。
必死に目を開いて周りの景色を覚える。
もし何か泉達と連絡が取れるのなら、道は覚えなければならない。
てか最近あたし拉致られすぎちゃう?
ほんまやってられへんな。
周りの景色を見るその途中紗羅ちゃんと目があった。
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