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「…杏と話させてくれ」
朔と響は、おい、杏か?と近寄って来たが、そばに寄るのを手で制する。
内容が内容かもしれないから。
『何度も言うが、あんたが今すぐ手を引いて帰るなら、彼女に手荒なことはしませんよって。まぁ既に手は出し掛けてますが、止めてやる。
でも、もし帰らないなら……
このまま彼女の身も心も、ボロボロにする予定です。こっちにも計画があるんでね。そろそろ彼女に執着してる男を解放してやりたいんですよ』
あまり時間はない。そう付け足した
解放してやらないのは、お前らだろ。
「わかったから、杏にかわれ」
もう俺は決めてるから
杏に出会った日から……心に決めてるから
『い、泉…』
「杏?まだ大丈夫か?」
少し枯れた杏の声が聞こえた。
今すぐ抱きしめて大丈夫だよって言ってやりたい
『あんな?あたし大丈夫やから、みんな連れて帰ってほしい。ごめん…巻き込んで。我儘言ってごめん。もう……守らなくていいから』
だから、笑って電話を切ってくれと
杏は言った
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目が覚めると手が縛られた状態で、窓もない部屋にあたしは居た。
ちょっと…スタンガンをあてられた首が痛い。
なめられてんのか、両手は後ろではなくて、前で縛られている。
気合出したら抜けれるし、殴ろうと思えば殴れる。足は動くんやし。
ただ何このドア!
足で蹴ってみるが、びくともしない。
鋼鉄かよ!ってくらい固い。
薄暗い部屋には、天窓があって、そこから少し光がさしているだけ。
家具はベッドと、ソファがあるだけ。
え、監禁?
「ちょっとーー!起きてんけど!」
何が目的か分からへんから相手の顔もしっかり見なければいけない。
烈火の敵?それであたしを拉致った?でも違う気がする。
紗羅ちゃんから烈火への執着は感じられへんかったから。
今度は扉ではなく、壁の方を蹴ろうと足を振り上げたとき。
扉が開いて、誰かがあたしに激突してきた。
「いた!」
何よ…
あたしの上に覆いかぶさってきた人を見てビックリした。
「え、紗羅ちゃん?」
あたしの上で痛そうに顔を歪めていたのは、頬に傷を作った、紗羅ちゃんだった。
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