窮地

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な、何がどうなってるん? 扉を見ると、色の抜けた髪に、不敵な笑みの男がいた。 おかしいな あたしコイツを知ってる気がする。 「起きたんですね?5分くらいしか気絶してなかった。相変わらず頑丈な人だ」 「あんた……あたしを知ってる?」 一度も目をそらさないその瞳は、曇っていた。 「水瀬 龍樹(みなせ たつき)ですよ?覚えてませんか?」 水瀬…こいつが…記憶にあるような気がするその名前と、このニヤけた顔。 あたしは知ってる。 全てが結びついたとき、身体が震えた おかしい なんでこんな事なってるんやろう。 逃げれるかな 不安になってきた 「あんた、スコーピオンの幹部やな」 思い出した。 サトルの隣にいたコイツを。いつもニヤニヤして周りを見ていた薄気味悪いコイツを。 あたしがそう答えたのを聞いて、満足そうに微笑んだ。 あぁ なんや スコーピオンか 烈火の敵じゃなくてよかった。 「サトルはどこ?」 みんながいない時でよかった。サトルがいるならあたしは…… きっと殺してしまうから。 「サトルは居ないよ?この計画は俺の独断なので」 あやしすぎる。 たしかにスコーピオンは、チームといっても寄せ集め。ただサトルについて行く人が勝手に集まっただけ。 水瀬もその一人やろけど。 「独断であたし拉致って何したいん?」 紗羅ちゃんまで使って。 サトルじゃないとは思ってたよ。 サトルはあたしを直接拉致なんてせん。サトルなら周りの人からやるから。 だから違うとは思ってたけど。 「いや〜サトルがあんた執着してるのは知ってるでしょ?そろそろ困っててね。もう解放してやってほしい」 ね? そう笑う水瀬に、あたしはキレた。 「誰のせいでこんなんなってる思ってんねん!解放してくれへんのはサトルやろ!!いつまでもあたしを縛って……いろんな人巻き込んで… 解放してやってほしい?冗談も大概にせぇよ!あたしのセリフや!あたしが……あたしだって…」 悔しい なんであたしがそんな事言われなあかんの? あたしがサトルに何をした? されてしかないねんけど。 どこで出会ったかも知らんし、なんであたしに執着してるかも知らんし。 なんで人生めちゃくちゃにされなあかんかも分からへん。 でも
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